後ろにいるはずの同行者に尋ねながらぐるりと周囲を見回すと、 恐ろしく不規則に伸びきった木々と隙間から覗く青空が見えた。 「たぶん・・・・・・まだ、ズールの森の中にいると思うけど」 ぽつりと呟く彼女の言葉は、まぁ間違いではない。 間違いではないのだから、と彼は胸に手を置いて深呼吸をして怒鳴りつけたい衝動を押さえた。 「そんで、ここはどこなんだ?」 耳を澄ますと、草木を揺らす風の音や小鳥のさえずり、 また、森の奥のほうからゲキョゲキョと怪鳥を彷彿とさせる鳴き声なんかが聞こえたりする。 「たぶん・・・・・・」 「たぶん?」 自信のなさそうな声音を聞き返し、先を急かした。 「たぶん・・・・・・まだ、ズールの森の中なんだと思うけど・・・・・・」 ぽつりと呟く彼女の手には、方向を示す磁石と、土地を示す地図があるはずだった。 プチンと何かが切れる音がした。 途端、彼はグルッと半回転をして、 確かマッパーなんていう職業であるはずの彼女にビシィと指をつきつけた。 「てめえ、何回迷えば気がすむんだっ!!」 一体どこにいたのか、鳥達が一斉に飛び立った。 さて。 今回のクエスト内容はというと、 ズールの森に生息する薬草を取ってくる、 いつも通りといえばいつも通りの簡単なアルバイトだった。 ・・・・・・そのはずだった。 これまたいつも通りに地図をマッパーのパステル嬢に預け、 どんどこ森を突き進んでいた六人と一匹。 ちなみにエレキテルな例のカバは道程の起伏が激しすぎるために武器屋でお留守番である。 とにかく、これまたいつも通りと言おうか、 迷子のマッパーことパステル嬢は盗賊トラップ氏を引き連れて、見事に迷ってくれた。 いつもと違う点をあえて挙げるのならば――――――― それが、故意に引き起こされたという事だろうか。
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初連載ものでドキドキ。 それにしては出だしがえらい不穏ですが。 |
< 2002.05.12 up > フォーチュン・クエスト (C)深沢美潮/迎夏生/角川書店/メディアワークス |
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