青春の輝き

 
 最初の電話。
 発信元が病院で驚きと疑問と不安を抱きつつも、それを受けた。
 ディスプレイに現れたのが顔見知りの少女で、且つ表情から悪い知らせではないらしく。
「やあ。ノノ、だったよね? フィーもタナベも席を外しているんだ。言付けだったら…」
「ううん、違うの。ユーリさんに相談があって」
「俺に?」
 再びもたげたのは驚きと疑問。
 今は遥か彼方のハチマキが入院してノノに出会ったのが数年前。
 その繋がりで顔を合わせたことはあるが、相談を受けるほど慕われていたとは意外だ。
 まだフィーやタナベだったら分かるのだが。
 ルナリアンたる彼女だが、頷く顔は真剣で年相応のもの。
「男の人は、宇宙工学に興味のある人は、どんなプレゼントだと嬉しいの?」
 ああ、なるほど。
 瞬間的に合点がいったが、あごに手を当てて考え込むフリをした。
「それは、例えば……ロケットが好きな男とか?」
 彼女が知り得る男性で彼に最も近いのが自分だったわけだ。
 なんとも光栄じゃないか。
 ノノは珍しく、あくまで俺が見た中でだが、はにかんだ笑顔を見せた。
 と思えば。
「ぶっちゃけキュータなんだけどね」
 そこでぶっちゃけるかな。
 日本人だった妻とは違う。いや、国籍の問題ではなさそうだ。
「地球に行って直接お祝いはできないから、プレゼントだけでも強烈にお祝いしたいの」
 両手を広げる『とてもたくさん、とてもおおきい、とてもすごい』の、宇宙でも使えるボディランゲージ。
 随分と愛されているわけだな。
 ロケット技術者として腕を上げている少年。
 自分への誕生日プレゼントに愛情を込めてくれる少女が居るとは、まだ知らなそうだ。
「木星に行ってる連中ほど良いアドバイスはできないよ」
 一瞬きょとんとしてから遠慮なく笑った彼女は奥ゆかしい淑女にはやや遠いかもしれなかったが、
恋する乙女には、そう遠くないように見えた。


 次の電話は地球からだった。
 実を言えばこちらの電話を待っている最中だったのだ。
「こんちは、ユーリさん。やっぱりメールで言ってた推進剤配合じゃダメだったよ」
「キュータロウくんの誕生日ってさ、もうすぐ?」
「ポンプの耐久性からすると……。誕生日? 来月だけど」
「そうか。おめでとう」
「ああ、ありがとう。って、早いし!」
 誕生日だけの祝辞じゃない。
 きっと君は素晴らしいプレゼントを受け取るだろうってことさ。
 君らはまさに青春の1ページをめくっている所なのだな。
 その懐かしい光は、今の俺には眩しいばかりだ。
「若いって……いいね」
「は? 何その生温い笑顔。ちょっとユーリさん、聞いてる? おーい!」

 がんばれ。
 恋愛ってやつは君が苦心しているロケットよりも手強いぞ。


オワリ


 
 
 
 
説明不足な上にぶった切りSSですいません。
ユーリの不思議な人ぶりを書きたかっただけかも。
9→ノノ情報は…地球や某先生からの虫の知らせってことで〜。

< 2007.03.25 up >
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